2012年3月28日水曜日

奇妙な日々

とあるコンペを数名の友人と協同でやっていて
一次の提出と同時に、モロッコに休暇に出た。

初めてホンモノの砂漠、ホンモノのノマドと出会う。


場所によって全く表情が違うモロッコの街。
赤いマラケシュ、青いシャウエン。


モロッコの話は語り尽きないのだがその前後に奇妙なことがあった。

コンペ提出の数日前、こんな夢をみた。

「昔、男ありけり。
男は生きることの意味など知らずにテイタラクに毎日を送っていた。
あるとき男のもとに神々が現れた。

『お前は今日死ななければならない。
それは運命で決まっていることだ。
しかし、もしお前が今から船に乗り、
世界を一人で一周してくるのなら、
あとしばらく生きることができるだろう。』

男は不条理を嘆いたが、すぐさま舟に乗ることを選んだ。
舟に乗ってしばらく航海し、男は小さな街で食料を買おうとした。

その街ではアジア人の商人が日本人を騙り「NIPPON」という商店を営んでいた。
不当廉売される偽物の日本製品をいがみ合いながら買う客をみて、
男はこう思った。

『なぜ人間はこうも醜いのだろう?
なぜ私はこんな世界に生きていなければならないのだろう?』

男は鬱々としながら、その場にいることに耐えられず、
旅を続けた。

そして、男はとある街に来た。

その街では人々が街路を丁寧に掃除し、
愛くるしい市場の建物では和気あいあいと店番と客たちが語らっていた。
すべてが美しく、安らいだ雰囲気だった。

『あぁ!生きることはなんと素晴らしいのだろう!
この街でなら生きていきたい。
航海なんて馬鹿らしいことは止めて、この場所に住みたい!』
男が船を離れようとした時だった。

再び神々が現れた。
『航海を止めてしまったお前は、
もう生きることができない。』
男は困惑していった。
『私は、生きることの意味を見つけたのです。
どうして死ななければならないのですか?』
神々は静かに首を振り、男は生き絶えた。」

モロッコ最後のよる。
部屋の電球がつかないのでひねってみると、手元で爆発した。

そんなこんなで生きている。

2012年3月3日土曜日

朝早く再び列車に乗る。
lisboaで見るべきものは少ないと聞いていたが、郊外まで脚をのばすと良いものがある。
旅のお供にしばしば連れられる淵上正幸氏の『ヨーロッパ建築案内』にのっていないもので、
理科大の坂牛先生がブログに載せていた灯台博物館を訪ねてみようと思いたつ。

カスカイスの街はlisboaから電車で30分あまり。
夏場は保養地として賑わうそうだが冬は閑散とした海辺の町である。

ここにはソウト・デ・モウラが設計したpaula lego美術館もある。
街の案内所は10時から開いているという看板を掲げながら10時を回っても人気がない。

しょうが無いのでとぼとぼ地球の歩き方の地図に書きこまれた先輩のメモを頼りにCasa なんちゃらpaula legoへとむかう。

赤い建物なので目に入るとすぐに気づく。
コンクリートの表情が独特だ。
中の展示が入れ替え中で展示室は見れなかった。
しかしミュージアムショップや階段、カフェなどを見る。
売店の天井が外見のとんがり帽子のままにぶち抜きの吹き抜けでいたく驚く。
階段の手すり周りはまた奇妙なディテールで(スチールと木を組み合わせてつくっている)
ソウト・デ・モウラのこだわりを感じさせる。
しかしこの人は自分の内面のパッションみたいなものを熱烈的に形にしているが、
その確信みたいなのはどこから来るのだろう?

そこから歩いてマテウスの灯台美術館を訪れる。
前掲の坂牛先生の記事で気になっていたものだ。

白い建物が生粋のモダニストを予感させるが、
展示棟は外装にタイルを用いて既存の灯台との関係をつくっている。

このタイルの貼り方が140mm角を基本とするアズレージョからずらしてあるのが面白い。
さらに家型のボリュームをつくりつつも、抽象化された軒の出がない形態である点に注目すると面白いことに気づく。
壁面にも水勾配をつけている。

たしかにタイルですべて仕上げるならこれのほうが合理的である。
雨だれも残らず綺麗な壁面であった。

市内に戻り、Chiado museu, Effel elevator, 建築家協会などをみてまわり、再び万博会場跡地に行く。

前回見忘れたゲートタワーやいくつかのパヴィリオンを見て宿に戻る。
夜はムラタくんがいい感じのお店に連れていってくれた。
(実は予定の店と違うところに入ってしまったようだったが、全体的に似たような街区だった。)

最終日はポストモダンの遺物のショッピングセンターを見る。
グッド・バイ・ポストモダン。

昼飯に近所のスーパーに併設されたカフェで魚のグラタンみたいなのを食べる。
「飯くうと日本に帰りたくなるよね」
そんな会話をしていた。
おみやげにチョリソーをもらい昼過ぎの便でlisboaを発つ。
小汚いけれどなんとなく憎めない感じの街だった。


帰国便もまた遅延し空港を駆け抜けるも、
乗継の飛行機も同じく遅れており急ぐ必要はなかった。
ターミナルの真ん中が走り抜けるための通路であることに気づく。

以後は乗り継ぎ時間にも気を使うようにしようと思う。
宿で朝食を軽く済ませ、チェックアウト。
Casa da MusicaでSerralves美術館とセットのチケットを買っていたのでそこへ向かう。
またしてもバスが良くわからん。
長めに歩きつつも到着。

トップライトで自然光を利用した展示空間の先駆けの美術館らしい。






もともと私有地の庭園の中にあるので
カフェやオフィス部分は庭が綺麗に見える開口が取られている。

光に関する技巧が中心の白い空間である。
ホワイトキューブではなく幾何学が色々な所で働いている。

庭に出て歩いて行くといくつか野外の展示にも出くわす。

ルートみたいなものがあるのかないのかよく分らない感じで気づくと裏方に来ていた。

またよく分らないバスに揺られCasa da Musica駅に向かう。
そこからメトロ、電車を乗継、Aveiroという小さな町に移動する。
地球の歩き方とかでは2,3ページの場所だがこの街のAveiro大学は
シザ、ソウト・デ・モウラなどが設計した建物が並んでいる。
駅から街の中心まで20分歩き、そこからさらに15分位でキャンパスにつく。

レンガを基調としているはずだがソウト・デ・モウラは打ちっぱなしで反抗している。

コンクリートの型枠は階高と同じサイズのものを使い、大理石の庇、奇妙な手すりのディテール。

シザはレンガを使っているものの酔狂な感じの局面。

(屋根と天井も局面だが内部は撮影禁止)
シザは指定がなければ壁に同じ石材を使っている印象がある。

中庭が明るい建物。

この街の名産らしい卵黄の甘ったるい餡を使ったモナカを食べて、lisboaへと戻る。

lisboaを一日で出てportoに向かった。
ausmipの巴里組の何人かが先にportugal入りして
portoにいるというのでそれを追ったのだ。

新幹線のようなものAPに乗る。
後で知ったがICという列車の方が圧倒的に安い。
快適だった景色も代わり映えしなくなった所でPCを取り出し、あれこれ。

portoの方がlisboaより文化水準が高い印象を受けた。

道に迷いつつ(バスが本当にわかりにくい)
porto大学建築学部でキトウ氏を首魁とする巴里組に合流しシザ様の仕事を拝見する。

白い幾何学による光を意識した空間がひたすら展開される。

「ああ、こんなに空間意識で建築をガリガリ作っていいのか」
という妙な感慨を覚える。
プログラムがどうのとか社会性がどうのとか、構法的な意識とかそういうのはなく、
白い幾何学である。

階段の納まりとか突っ込みどころもある。

更に歩いていける範囲にあるというシザの集合住宅を見る。
間口が以上に狭かったりどういう内部なのか謎が多い。



この強い壁のすぐ裏がメトロのLapa駅なのだが
そちら側の壁はいたずら書きですごいことになっていた。

そしてportoの建築名所Casa da Musicaへと向かう。

英語のガイドツアーに参加。各部屋の設計時の想定と現在の使われ方、材料等の説明を聴く。






















様々な仕上げが用いられているが、なぜかそれを見ているとOMAのプレゼンテーションや
コールハースの著作を読んでいる時と同じ反応を脳がしているらしく
ものすごい文字量を読んだような錯覚を覚える。

とても理屈っぽいが同時に建築と言うよりは現代美術の立体作品的な仕上げだと思った。
マテリアルはコンペの時からバジェットの都合だとか技術的な問題で変更があったらしいが
個々に思考が詰まっている感じがする。
床の仕上げや壁面にメタルが多用されていてギラギラしている。


説明の英語を聞き間違っていなければ、
clubbingと称して月に一回催されるイベントでこの建物は街を中に取り入れている。
各部屋全てにオケやDJなどが入り夜中から明け方まで延々と音楽を流して人々が集うらしい。
これを公共機関というか行政がやっているのだからすごい。

その後、本日の宿にチェックインしに行き、
近所にある観光名所らしい白い本屋を見る。

本当に見せ場なのは内部の流線形の階段だがそこは撮影禁止。
うね〜っとしている。好みによるシロモノだと思う。

この日泊まったホステルはCINEMAというテーマで運営されていて、
大量のDVDコレクションに加え、
各部屋に映画が割り当てられ鍵にもそのイメージがステッカーなどで貼られている。
階段や廊下、バストイレにもポスターがある。
http://www.rivolicinemahostel.com/
宮崎駿の作品も「天空の城」「モノノケ」「ちひろの冒険」が並んで貼られていた。
(La Puta は the Bitch という意味になるらしく他の国では「天空の城」とだけ訳されるらしい。あとの2つはちゃんと理解されていない感じがする。)

オードリー・ヘップバーンがいたずらっぽく微笑む「ティファニーで朝食を」のポスターを眺めながら少しstudy。
日付が変わる辺りで就寝。